僕は、未だ空の青さを知らない

ネット空間の僻地で、生きている事の爪痕的な、僕の独善とした散文を綴る場所

苦しいあなたは、深淵に蒔かれた種です

 

 世の中には、不運や障害に傷つけられ、深淵から這い上がれなくなった人達がいる。
その人たちに向けて、心を開いて、外に飛び出しましょうなどと、言うのは簡単だ。

 ウェブを歩けば、ポジティブだの、引き寄せの法則だの。そういったキラキラした、美しい言葉がもてはやされている。


 それを受け入れられるのは、まだ幸せな証ではないだろうか。

 本当の苦しみとは、頑張っていれば、自ずと乗り越えられる――そんな甘いものではない。

 

 前を向こうとしては、引き倒され、引き寄せようとしては、蹴倒されてしまう。
 何度も何度も心を傷つけられ、トラウマが多すぎて、自分がトラウマで苦しんでいる事さえ自覚できない。
 多くを諦める事で、心の平静をギリギリで保っている。そういった状態で日々を生きている。

 

 そんな状態の人たちに、煌びやかなインフルエンサー達のエールは届かない。


 他者や社会の善意の存在を諦めざるを得なかった彼らには、稀に訪れる、奇跡的な援助や手助けの存在を信じる事が難しい。

 

 助けを求めて、何時ものように裏切られた時に、もう立ち上がれないような気がしてならないからだ。


 もし、あなたが、そんな状態なら、いっそのこと今は、その障害を乗り越えなくてもいいと僕は思う――。

 

 今は他者を信じられなくとも、まずは自分だけを信じればいい。

 

 そのまま、内なる自分に目を向けて、その縮こまった自分と対話し、認めて愛せばよい。他人には、ダメ人間とか弱虫とか可哀そうな人と、指をさされるかもしれないが、それでいい。

 

 不遇で矮小な自分をニュートラルに認められた時に、そこから広がる視野がある。それは、淡々と日々を過ごしている人々には絶対に得られない境地だ。

 不幸のどん底で、その理不尽を受け入れたのち俯瞰し、その中で深慮して得た智慧を持つ人間が、本当の賢者だと僕は思う。

 

 あなたが深淵から世界を見渡し、思索したその知見は、時間をかけて少しずつ自分を癒していくでしょう。そして、いずれは多くの人を救っていくはずです。


 人類史を見れば、不幸な時代の後、大いに栄え、また凋落するを繰り返している。


 こういった歴史のループが起こるのは、その時代における光と暗闇という波の中で、生まれ成長する賢者の量と質が、変化しているからだと。それが本質なのだと、個人的には思う。


 きっと、あなたは、現代に蒔かれた賢者の種の中の一人です。

 

 あなたは、暗闇の中、独りぼっちだと感じるかもしれない。でも、少なくとも僕は、あなたの価値を知っています。

 

 深淵の中でどす黒く腐敗するでなく、美しく発芽したとき、あなたは貴重な存在になっている筈です。